[映画]  アフター・ウェディング Efter brylluppet After the Wedding (2006年)

『アフター・ウェディング』を見始めて、「あ、これは 『未来を生きる君たちへ』に似ている!」と思ったが、やはり両方ともデンマークの女流監督スサンネ・ビアの作品であった。テーマは違いこそすれ、彼女の映画の作り方には何か共通性がある。まず抽象的な観念が先に来て、それにさまざまなストーリを木に竹を接ぐように足していくのである。

デンマーク人ヤコブはインドで孤児院を運営しているが、破産寸前の状態に陥ってしまう。そんな時、母国デンマークのある会社から寄付の申し出がある。しかしそれにはヤコブがコペンハーゲンを訪れてCEOと面会するという条件がついていた。ヤコブはコペンハーゲンでその会社のCEOのヨルゲンに会うが、ヨルゲンに彼の娘アナが週末に結婚するので、式に来るようにと招待される。結婚式に出席したヤコブはそこで、20年振りに元恋人のヘレンに再会するが、ヘレンはヨルゲンの妻となっていた。そしてヤコブは、アナが自分の実の娘であるということを知って衝撃を受ける。この出会いは、癌で余命いくばくもないヨルゲンが自分の死後の家族のことをヤコブに任せるために仕組んだことであり、孤児院への彼の莫大な寄付はヤコブがデンマークに住むということを条件にしたものであった。そこで、ヤコブは血の通った自分の娘を選ぶか、自分が愛するインドの孤児たちを選ぶかという決断に迫られるのであった。

この映画はアナの結婚式の週末前後のほんの短い時間を描いているが、数々のコンセプトが所狭しと詰められている。インドの貧しさを忘れてはいけないというプロパガンダ、生みの親か育ての親か、母国は自分が生まれた国なのか選んだ国なのか、激情的な愛と穏やかな愛とどちらが深い愛か、真の優しさは悲しい事実を知らせることなのか知らせないことなのか、青臭い理想主義者で生きるか、問題解決ができる現実主義者として生きるか、人としての家族に対する責任感とは何か、とにかく色々な概念や理屈が所狭しと押し詰まっている。結婚したアナの婿がさっそく浮気をし、それがアナに見つかるというおまけもあるが、これは挙式後まもなく起こっているという慌しさである。

あまりにもたくさんの概念を2時間の映画に詰め込むので、ストーリーには色々破綻或いは非現実的な所がでてきている。ヘレンはヤコブと別れた直後にアナを身ごもっていることに気がつくが、彼女はヤコブを捜そうという努力もしていないかのようだ。「あなたがデンマークに帰って来てくれるのを待っていたのに、結局あなたは帰って来なかった」というロマンチックな言葉でその状況をぼかすのみである。20年後にまだ愛のほとぼりがあるくらいの二人なら、なぜもっと相手を取り戻そうという努力をしなかったのか?ヨルゲンにしても、一代で身をなした大富豪で多くの友人に囲まれており、死後自分の家族を助けてくれる人もいるはずだし、弁護士に依頼して子供のための遺産管理もできるはずなのに、なぜ見も知らず、人間的にどれだけ信用できるかどうかわからないヤコブに死後の自分のヘレンとの間にできた幼い双子を含めた自分の家族の世話を頼むのか?またヨルゲンは、ヤコブに自分の死後はヘレンと一緒になってほしいと示唆するのだが、20年も離れていて、違う方向に歩いて来た二人がなぜ突然一緒にならないといけないのだろうか。まだ美しく経済力もあり自立心の強いヘレンは未亡人になっても伴侶は必要なく、もし必要となったら自分で自分の事位決められそうなものであるが、なぜ20年前の恋人なのか。

しかし何よりも、ヨルゲンがどうしてそういとも簡単にインドにいるヤコブを見つけたのかという疑問が残る。ずっとヤコブのことを知っていて彼の動きを観察していたのなら何とも言えず不気味であるが、映画では、癌で余命いくばくもないことを知ったヨルゲンが(運よく)ヤコブを捜し出してコンタクトしたように描かれている。これが不自然なのだ。自分が癌で長く生きられないと知った人間がまずすることは、ヨルゲンがやったように財政の整理をして、残った人間が困らないようにすることだろう。しかし、その次に考えることは、残り少ない時間を自分にとって一番大切な家族との一分一秒を大切に過ごすことだろう。死を初めて身の回りに感じた時、今まで自分が当たり前と思っていたすべてのことが全く違って見え、人生に対する見方が根本的に変わってしまうだろうが、自分の知らない人間に対して突然に思いを寄せるというのは、あまりにも不自然である。

スサンネ・ビアは作品の中にアフガニスタンやスーダンなど第三国を絡ませるが、彼女自身は撮影が始まるまで、その国に実際行ったことはないという。彼女は、自分が得た情報で、何らかの良心が目覚めるタイプの人間だとしか言いようがない。この映画は感動的なメロドラマを狙っているようだし、アナとヤコブが親子としての感情を築いていくシーンなどはかなり美しいのだが、この映画は都合よく美しいストーリーを回そうとして、細部は無理をして辻褄を合わせている部分が多過ぎて、いったんそれが鼻につき始めるとどうも感情移入ができにくくなり、製作者の美しい意図はわかるが、感動が今ひとつ湧かない映画なのが残念だった。

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